家具におけるクリエイティブの限界

前回から少し間があいたので前回までを簡単に振り返ります。

・デザインやクリエイティブな発明や発見は日々蓄積していくので、その可能性は後世になればなるほど狭まっっていくのではないか。
・バンドの名前などシンプルなジャンルほど可能性は狭まりやすい。

そして今回は家具の場合を考えてみたいと思います。

結論から言うと、クリエイションの可能性はかなり狭まってきていると思います。

その理由も明白です。

1 家具は極めてシンプルな構造、シンプルな機能のシンプルな道具であり、
2 基本的に室内で使うものであるためにファッション性より機能性が重視され、流行に左右されにくく、
3 材料、機能がシンプルで多様性が求められないため、新技術、新素材が適用されにくい。

からということになります。

椅子についての考察

1については、例えば椅子を考えてみると、
人間が座ることができる、というシンプルな機能だけが必要条件であって、それは椅子が初めて作られた時から1mmも変わっていません。

椅子の大きなデザインのパターンはほぼ出尽くしたといっても過言ではないわけで、あとは細部の違いしかないと思われます。

特に家具デザインが勃興した1950年代から70年代に北欧やアメリカで数多くの名作椅子が作られてしまったので、1980年代以降に名作椅子と呼ばれるものはあまり出ていません。
どうしてもそれ以前のどれかの椅子に似てしまうのです。

そういうわけでこれからの時代に、ウェグナーやモーエンセン、イームズを超えるようなデザイナーが現れることはほぼあり得ないと言えると思います。

モーエンセンのJ39 名作、シンプルなデザイン

ファッションとの比較

2について、これはファッションデザインと比較するとわかりやすいです。

ファッションは外で使う道具であるために強いメッセージ性が必然的に付加されるので、流行に大いに左右され、常に新しいデザインが求められます。

しかし、家具は小さな流行はあったっとしてもスタンダードな名作が長く愛され、使われるというジャンルになります。
50年以上前にデザインされたものが今でも全くそのままで価値が落ちないというのは珍しいジャンルだとも言えると思います。
洋服しかり、車しかり、住宅しかり、50年以上前のデザインはさすがに受け入れられません。

逆に言うと、そういう名作と同じ土俵で戦っていかないといけないので、デザイナーにとっては厳しいジャンルになります。

家具デザイナーという職業の人が少ないのはそういう理由が大きいのかもしれません。

結局新技術しかない

どのジャンルにおいてもクリエイションの新しい地平を切り開く最も可能性の高いものは新技術です。

洋服、車、住宅、どれも新技術によってどんどん進化しています。

家具も曲げ木、金属加工、積層合板、プラスチック、ウレタンフォーム、などの新技術によって20世紀後半にかなりの新しいデザインが生まれました。

しかし、構造と機能がシンプルであるため、新技術による進化もほぼ止まりつつあります。

今後そして今現在進行形で可能性のあるものとしては、3Dプリンターでの新材料によるデザインや、触ると何か変化が起きるような素材、装置の家具、などですが、家具は人間が直接触れるものなので木とファブリックというシンプルな素材が主材料であり続けるのは人間の身体が変わらない限りは変わらないと思われます。

アルヴァアアルト タンクチェア

結論は、、

結論としては最初に書いたように、家具の今後のクリエイションの幅は大きくはない、という悲観的なものになりました。

では、今後家具デザイナーは何をしていくべきなのか、どこにクリエイションの可能性があるのか、それを次回探っていきたいと思います。